医療心理学・行動医学に関するネットワーク

8月, 2013のアーカイブ

【Grappo研究会2013実施のご報告】

金曜日, 8月 23rd, 2013

Grappo研究会2013を下記通り実施しましたので、ご報告いたします。

  • 日時:2013年8月18日(日) 11:00-17:00
  • 場所:大阪大学中之島センター302

プログラムは、午前の部(11時‐13時まで)と午後の部(13時‐17時)の二部構成でした。午前の部は、Grappo運営メンバーを中心に、今後のGrappoの在り方についてディスカッションする時間にあて、午後の部を、臨床レクチャー、研究レクチャー、研究計画発表にあてた、とても盛りだくさんの内容でした。

午前の部では、平井啓先生から「今後の医療心理学を考える:Grappoに何ができるのか?」と題してご講演をいただき、ディスカッションをしました。まず、がんに関する政策や内実的な現状といった全体の流れを知った上で、研究を進める必要性についてお話があり、Grappoがターゲットとするような医療心理学の立場で貢献していく方法として、「医療における問題解決に行動科学に基づく行動の予測と、それに対する対策を立案、実行することに専門家として携わること」がひとつの方向性として示されました。これは、臨床において心理士として患者さんに接する場面であれ、心理学者の立場から研究デザインを考える場面であれ、共通するところがあり、今後の個人の研究活動やGrappoの活動を考える上でのひとつの方針になると感じました。特に、患者さんやご家族が経験される難しい場面での意思決定に関して、心理士がコンサルタントとして介入することでうまくいった事例の紹介によって、「全体の行動の予測」とその解決策に関する「個別性の重みづけ」の両面から、考えることができました。

午後の部の臨床レクチャーでは、酒井清裕先生(近畿大学医学部付属病院)から、「臨床現場で知っておきたい、器質的データの見方」と題して、ご講演いただきました。血液データを中心に、具体的な数値を提示しながらのとてもわかりやすい説明の後、「せん妄」を具体例として、器質的データの有用性を知り、武器として活用するだけでなく、データを通して、患者さんの何をみるのかという点に心を配ることの大切さを、ミニクイズをはさみながら、巧みな話術によって、伝えてくださいました。特に、器質的データから読み取れることを理解した上で、せん妄のリスクの高い患者さんの環境調整を考えることにより、心理士が他職種の専門家と協同していく際に求められることがより鮮明になったように感じます。

また、研究レクチャーでは、佐藤寛先生(関西大学)から、「介入効果の評価のための統計的手法」と題して、ご講演いただきました。心理学的介入の効果を研究としてまとめる際に有用な統計手法として、混合モデルを取り上げ、「数式を使わずに」、わかりやすく解説してくださいました。従来の解析モデルに対しての混合モデルのメリットを強調しながらの、デモンストレーションによって、より身近で便利な統計手法として、混合モデルを理解することができました。統計手法としての議論にとどまらず、医療における介入研究におけるデータの扱いについても学ぶことができました。また、何かと統計的に武装するのが難しい一事例実験デザインのための統計手法についても解説いただき、興味深かったです。

最後に、研究計画発表では、福森崇貴先生(徳島大学)から、「患者のがん体験に接した後の看護師の認知に関する質的研究」と題して、ご発表いただきました。がん患者に接する看護師が、患者への共感を通して、自己犠牲的な偏った信念により「共感疲労」という状態になることに問題意識をもち、心理学的にそのプロセスを理解しようとした研究でした。とても興味深いテーマに関するわかりやすいプレゼンにより、ディスカッションが盛り上がり、時間が足りないほどでした。(まだ実施されていない研究計画の発表ですので、詳細を報告することは避けたいと思います)

全てのプログラムにおいて、レベルの高いご講演・ご発表をいただいたこともあり、本当に充実した時間を過ごすことができました。また、ご出席の先生方からの活発な質問や議論により、さらに理解が深まりました。何よりも、参加していて、とても楽しく過ごせたことと、研究に関してだけでなく、幅広くたくさんの刺激をいただけたことが印象的でした。この場を借りて、関係者各位に感謝申し上げます。

今回は、はじめてご参加くださる先生方も多数いらっしゃったので、懇親会以外でも、もう少し出席者同士での交流を持てる時間帯があれば、より良かったと感じました。今後も魅力的な研究会を企画・実施していきたいと考えています。Grappoの活動にご賛同くださっている先生方の積極的なご支援と、また新しい風を吹き込んでくださる先生方の積極的なご参加をお待ちしております!

(文責:塩﨑麻里子)