医療心理学・行動医学に関するネットワーク

JC:問題解決療法の枠組みをどう患者の記憶に残すか?

問題解決療法(Problem Solving Therapy)は、認知行動療法の一技法で、欧米を中心に、がん患者、うつ病や不安障害、アルコール依存症、肥満・喫煙問題等においてその有用性が実証されています(丹野ら,2004 )。問題解決療法では、5つのステップに沿って、効果的に問題解決するための枠組みを身につけることが目的とされています。ステップ1では、問題解決を促進する積極的な姿勢について、第2ステップでは問題の明確化と目標設定の仕方について、第3ステップでは問題解決策の産出方法について、第4ステップでは、よりより解決策の選択方法について、第5ステップでは解決策の実行と評価方法について学習します。我が国においても、2005年頃から、うつ病患者やがん患者等を対象に、この5つのステップに沿った問題解決療法プログラムを考案し、効果を実証してきました。その中で今後の課題の1つとして浮上してきたのが、いかにプログラム終了後も、患者自身に問題解決療法の枠組みを活用してもらうかということです。プログラムでは5つのステップを1つ1つ指導していく為に、患者の記憶の中では各ステップが独立したものになってしまい、体系化された1つのものとして残っているかは疑わしいところがあります。この5つのステップが1つの枠組みとして患者の記憶に定着し、プログラム終了後も患者自身の力で活用されることが期待されています。よって、今回は問題解決療法の枠踏みをどのように患者に指導するかについて、以下の論文を通して考察します。Sahler et al.(2005)の研究では、がんを患った子どもの母親430名を対象に問題解決療法に関する実証研究を行っている。通常の心理社会的ケアを受けた群(UPC; n=213)より、通常の心理社会的ケアに加えて8セッション(1回1時間)の問題解決療法を施行された群(PSST; n=217)は、問題解決スキルが高まり、不安と抑うつという否定的な感情が緩和されたと報告しています。その効果は、3か月後のフォローアップにおいても維持されていました。この研究の中で、年齢や教育歴等を考慮して、問題解決療法の枠組みを理解させ、記憶に定着させるために、Figure1のような、各ステップの頭文字「Bright IDEAS」のロゴが使用されています。「Bright」は、ステップ1の積極的な問題志向性を表しています。また、「I」はステップ2の”identify the problem”、「D」はステップ3の”determine the options”、「E」はステップ4の”evaluate options and choose the best”、ステップ5として「A」は”act”、そして「S」は”see if it worked”を表しています。このロゴをポケットサイズのブックレットの表紙や冷蔵庫のマグネットに使用しています。このように、すぐに目につくように工夫することによって、消極的な問題解決の姿勢や否定的な自動思考や回避行動を阻止するきっかけになると考えられています。ロゴを見たり思い出すことで「今の自分にできることからやってみよう」と考えて小さな一歩を踏み出すきっかけになるのではないかと考えています。我が国においても、問題解決療法の枠組みを記憶に定着させ活用させてもらうには、対象者を考慮して理解しやすく記憶に残りやすい教材づくりが必要であると思っています。デザインセンスのない私にとって、非常に難題ですが。。。

(文責 本岡寛子)

1) 丹野義彦・坂野雄二・長谷川寿一・熊野宏昭・久保富房(編)(2004) 認知行動療法の臨床ワークショップ2:アーサー & クリスチャン・ネズとガレティの面接技法. 金子書房,782) Sahler, O. J., et al.(2005). Using problem-solving skills training to reduce negative affectivity in mothers id children with newly diagnosed cancer: Report of a multisite randomized trial. Journal of Consulting and Clinical Psychology, 73, 272-283.

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