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【論文】難治性小児がん患児の家族が経験する困難の探索

難治性小児がん患児のご家族が、どのような困難を経験されるのか、ということについてインタビュー調査をとおして探索した結果をまとめた論文が、「小児がん」に採択されました。2010年2月に刊行の47巻1号に掲載される予定です。ご関心のある方はご連絡ください。

吉田沙蘭・天野功二・森田達也・尾形明子・平井啓 難治性小児がん患児の家族が経験する困難の探索 小児がん(印刷中)

【目的】患児の治癒が望めなくなってからの時期において、患児の家族は多様な困難を経験することが指摘されているが、家族支援の指針は確立されていない。そこで本研究では、難治性小児がん患児の家族支援のための基礎的資料を得ることを最終的な目的とし、家族が経験する困難および期待される支援について探索した。

【方法】対象者は小児がんで子どもを亡くした経験をもつ親6名および、小児がんの治療に従事する医療者13名であった。1)治癒が望めなくなってからの時期に困難を感じた(感じると思われる)課題、2)その際に役に立つと思われる医療者からの支援に関して半構造化面接をおこない、内容分析をもちいて解析をおこなった。

【結果】困難と感じた課題として、遺族を対象とした調査では「死別後の心理的苦痛」「病状の受け入れ」「夫婦間の関係」「きょうだい児との関係」「治療やケアの意思決定」「医療者との関係」など11テーマが、医療者を対象とした調査では「治療やケアの意思決定」「病状の受け入れ」「夫婦間の関係」「付き添いの長時間化」など8テーマが得られた。意思決定や家族関係の問題に関しては、両グループから同様に発言が得られたが、医療者との関係については遺族のほうが、家族自身の負担については医療者のほうが強く認識している傾向がうかがえた。また、期待される支援として、遺族からは「死別後のケア」「十分な関わり」「意思決定支援」「患児への関わり提言」など8テーマが、医療者からは、「多職種での支援」「付き添いの負担軽減」「親の理解の促進」「きょうだい児へのケア」など7テーマが得られた。特に、きょうだい支援や遺族ケアに関して、支援ニーズが高いことが明らかとなった。

【結論】遺族および医療者という2つの視点から探索をおこなうことで、難治性小児がん患児の家族が経験する課題について幅広い知見が得られた。中でも、治療の中止や在宅への移行、延命措置の拒否といった、死を視野に入れながらのさまざまな意思決定や、きょうだい支援、死別後の遺族ケアなどが、難治性小児がん患児の家族支援における中心的な領域となる可能性が示された。

【コメント】治癒が望めないと診断されたお子さんのご家族は、本当にたくさんの課題に直面されます。しかし慢性的なマンパワー不足に悩む小児医療の現場では、そのすべてに対応することが難しい現実があります。そこで、現場のキャパシティの範囲内で、できるだけご家族のニーズに即した支援を提供するシステムを整備することが必要と考えられます。今回の調査を基盤として、さらに研究を重ねることで、そのようなシステム作りに向けた提言につなげていければと思っています。

(文責:吉田沙蘭)

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