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【学会報告】日本サイコオンコロジー学会第22回大会 9月30日~10月2日 広島 3

   10月1日、2日に広島で開催された、第22回日本サイコオンコロジー学会に参加してきました。残念ながら、私は一日目のみの一部参加となってしまいましたが、今年も様々な先生方のお話を聞き非常に有意義な時間を過ごすことができました。その中で、印象的だったテーマ「統合失調症患者ががんに罹ったときの現状や課題」について報告したいと思います。  

統合失調症患者のがん罹患時における現状や課題について、広島大学病院の日域広昭先生は精神科病院の立場から、島根大学医学部の稲垣卓司先生は総合病院精神科での経験からお話されました。また、慶応義塾大学の野口海先生、東京医科歯科大学の松島英介先生は、統合失調症患者への緩和ケアでの問題点について、具体的なケースを取り上げながら発表されました。

統合失調症患者の病状や治療に起因する問題としては、感情鈍麻や自発性欠如によって自覚症状の訴えが遅れることや、抗精神病薬によってがんの初期症状が出現しにくい、または、がんの初期症状が薬剤の副作用と判断されやすいことからがんの早期発見が困難になることが挙げられました。さらに、がんと診断された後も、がんという病気を理解することが困難であったり、医療者からの説明や指摘が妄想の対象となったりすることで、検査・治療の同意が得られない場合もあるとのことです。治療構造に関する問題としては、精神科病院の場合は転院先の総合病院が限られる可能性があること、総合病院精神科の場合は身体科との密な連携が必要になってくること等が挙げられました。また、単科精神科病院、総合病院精神科どちらにおいても、患者の精神病状によって精神科でのがん治療、緩和ケアの実施が必要と考えられる場合が少なくないようです。しかしながら、がん治療や緩和ケア専門のスタッフの不在により、十分な管理が行えない可能性もあるとのことでした。患者のがんの早期発見のためにも、精神病状へのケアとがん治療両者を十分なかたちで提供するためにも、日頃からの精神科病院、総合病院精神科、総合病院身体科間における密な連携の必要性を強く感じました。しかし、現状では、単科精神科病院から総合病院身体科への入院時に総合病院精神科への事前連絡を行うケースが非常に少ない、患者の精神病状が悪化するまで身体科から精神科へのコンサルテーションの要請がない、など今後の課題となることは多いようです。

がん治療では、治療の過程で重要な意思決定を度々行わなければなりませんが、統合失調症患者の意思決定については検討すべきことが多く残されているという話題も提供されました。統合失調症患者に対しては、がんの告知が行われていない場合が少なくありません。また、告知を受けて患者自身が意思を表わしている場合でも、その意思が現実検討能力を維持したままの“本来の”意思なのか、統合失調症という病気の影響で生じた意思なのか、という判別は非常に困難であるとのことです。その中で、治療方針を立てていくことが難しいことは容易に想像されます。医療者が患者本人や患者家族との十分なコミュニケーションを取ること、そしてやはり、身体科と精神科との連携を密にすることで患者の病状に応じて柔軟に対応していくことが、まず非常に重要ではないかと思いました。この話題で強く感じたことは、「どうすることが患者にとっての本当の幸せなのだろうか」ということでした。統合失調症の影響による意思であっても、その意思を持っている限りは患者本人の意思であることに変わりはありません。意思決定能力が低いと判断されても、治療拒否をする患者に対して治療を施すことが果たして患者の幸せに繋がるのか、このことは簡単に答えの出ることではないと思います。しかし、だからこそこのセッションのように議論し意見交換を行う機会は非常に大切であると感じました。

統合失調症患者のサイコオンコロジーについては、私自身まだまだ分かっていない点が多く、未知の領域です。しかし、現場での課題が多く議論する必要性が高いからこそ、このようなセッションが開かれたのだと思いますし、今後も考え、勉強していきたいです。

文責 岡田紫甫

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