医療心理学・行動医学に関するネットワーク

【学会報告】日本サイコオンコロジー学会第22回大会 9月30日~10月2日 広島

 10月1日から10月2日にかけてメルパルクHIROSHIMAで開催された、日本サイコオンコロジー学会(以下:JPOS)に参加してきました。JPOSはサイコオンコロジー領域で研究、臨床に関わる私たちにとって、もっとも「ホーム」で、毎年たくさんのものを吸収できる学会です。9月30日に併催された「心理士のための研修セミナー」にも参加しましたので、あわせてご報告させていただきたいと思います。

今年で3回目となる研修セミナーは、普段独学以外に勉強する場がほとんどない「がん治療の基礎知識」についてわかりやすく講義をしていただくことのできる、とても貴重な場となっています。今年は「うつ状態の鑑別」「乳がんの検査から治療まで」「心理士の効用と限界」という3つのテーマが取り上げられました。うつやせん妄といった精神症状は現場で遭遇することが多いにも関わらず、実際に心理士として評価し介入しようとすると迷うことの連続というのが現状です。研修会では講義に続き、提示された症例についてグループでアセスメントおよび介入計画の検討をおこないました。複数の人と意見を交わすことで、1人で考えるよりも多面的に評価をしたり、新しい発想が得られたりと、良い経験ができました。また、ディスカッションの後に精神腫瘍医の先生の見立てと対応を解説していただけたことで、症例を見るときにどういった点に留意すればよいのか、どのような点が落とし穴になるのか、ということが整理され、具体的にイメージしながら理解することができたように思います。一方乳がん治療の講義では、タイトルのとおり、検査から治療に至るまでの時系列にそって、最新の情報を教えていただくことができました。医学的な知識は心理士にとってもっとも弱い部分の1つですが、実際に患者さんの状況を理解し、信頼関係を築いて関わるためには、不可欠な分野でもあります。独学では、分厚い医学書を持ち出してもあまりの情報量の多さに挫折してしまうことが多いため、1時間というコンパクトなプログラムで、必要最低限の情報にしぼって解説していただけるこのような機会は、本当にありがたいと思います。13時~18時までほぼ休憩なしというハードなスケジュールではありましたが、非常に有意義な1日を過ごすことができました。

学会本体では、「終末期がん患者への生命予後告知に関する家族の認識」というタイトルでポスター発表をさせていただきました。がんでご家族を看取られたご遺族60名にご協力いただいたインタビュー調査の結果から、「患者さんに予後(残された時間があとどれぐらいか)を伝えたことのメリット/デメリット」および「患者さんに予後を伝えなかったことのメリット/デメリット」についてまとめさせていただきました。「がん」であることの告知が積極的になされるようになってきた一方で、予後に関しては依然としてご家族にのみ告知されることが多いというのが日本の現状です。今回の調査からは、患者さんに予後を伝えることによってご家族は、「患者さんを落ち込ませてしまった」とつらい思いをする一方で、患者さんとつらさを分かち合ったり、一緒にさまざまな決定をおこなったり、死別に備えたりすることが可能になるということが明らかとなりました。またあわせて、ご家族自身が納得して判断をできること、具体的に「数字」を伝えるかどうかに関わらず、将来へのおおよその見通しを患者さんと共有することが重要であるということもうかがえました。

予後告知の問題はサイコオンコロジー領域においては常に関心の的となるテーマの1つです。今回の学会でも2日目に「今、あらためてがん告知を考える」というタイトルのパネルディスカッションがおこなわれました。そのセッションの中で名古屋市立大学の明智龍男先生が「ご家族が患者さんに告知をすること、あるいはしないことが、どのような影響をもたらすかということについて十分に理解できるよう情報提供することが大切」というお話をされていました。今回発表させていただいた調査の結果を、このような現場での情報提供のツールの1つとして、活用できるよう検討することを、今後の課題としたいと思います。

なおこの発表で、ベストポスター賞という賞をいただきました。まだまだ駆け出しの身としては本当に恐れ多い気持ちでいっぱいですが、計画、実施段階からまとめに至まで、手取り足取りご指導いただいた先生方のおかげと思っています。これからも、患者さんやご家族の役に立つ研究をしていけるよう、もっともっとがんばっていきたいと思います。 学会期間中広島はあいにくのお天気でしたが、お好み焼きにあなごにつけ麺に・・・と学会の合間をぬって広島を十分に味わうことができました。来年は名古屋での開催となるそうです。認知療法学会との共同開催ということで、いつもとは違う新しい雰囲気になることと思いますので、今から楽しみです。

(文責 吉田沙蘭)

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