医療心理学・行動医学に関するネットワーク

健康診査・検診受診行動に関する行動の変容ステージと意思決定のバランスについて

健康診査・検診受診行動に関する行動の変容ステージと意思決定のバランスに関する論文が、行動医学研究にてパブリッシュされました。ご関心のある方はご連絡ください。

長塚美和・荒井弘和・平井啓 2009 健康診査・検診受診行動に関する行動の変容ステージと意思決定のバランス.行動医学研究,61−68.
【背景・目的】
近年、生活習慣病の予防や疾病の早期発見を目的とした健康診査(健診)やがん検診などが重要であるといわれているものの、その受診率は十分ではなく、改善することが期待されている。わが国では健診・検診受診に関する研究もなされているが、受診群・非受診群の2群にわけて検討したものが多く見受けられる。そこで本研究では、単に受診したか否かではなく、準備性や行動の継続期間が考慮できるトランスセオレティカルモデル(Transtehoretical model: TTM)に注目し、健診・検診受診行動の変容ステージにおける分布を明らかにし、健診・検診受診行動の変容ステージと健診・検診受診行動に関する意思決定のバランスとの関連を明らかにすることを目的とした。
【方法】
全国15地域の調剤薬局に訪れた30歳以上の男女に対して無記名の郵送法による横断的質問紙調査を行い、40歳以上の男女503名を分析対象者とした。測定項目は、属性、健診・検診受診行動の変容ステージ、健診・検診受診行動に関する意思決定のバランスに関する項目であった。
【結果・考察】
健診・検診受診行動の変容ステージの人数分布は、前熟考期に属する人が21名(4.2%)、逆戻り期に属する人が47名(9.3%)、逆戻りリスク期に属する人が53名(10.5%)、熟考期に属する人が32名(6.4%)、実行期に属する人が36名(7.2%)そして維持期に属する人が314名(62.4%)であった。逆戻りリスク期以外においては健診・検診受診行動の変容ステージが高い対象者ほど恩恵の評価が高くなり、負担の評価が低くなることが明らかになり、一般的なTTMの理論的枠組みを一部支持する結果となった。一方で逆戻りリスク期に属する人は、恩恵の評価に関しては先行研究と同様の結果となったが、負担の評価に関しては熟考期に属する人よりも低く、実行期や熟考期に属する人と同程度であるという先行研究とは異なる結果となった。この点に関しては、意思決定のバランスの負担の項目の吟味や変容ステージの質問項目を再検討することが今後必要であると考えられる。今後の課題と展望としては、縦断的研究の実施、調査を実施する集団の選定、各健診・検診(たとえば大腸がん検診・マンモグラフィ検診など)に焦点を当てた検討があげられた。
本研究は健診・検診においてTTMの枠組みをわが国で初めて検討したものであり、結果が一部示唆されたことは今後の検討において意義があると考えられる。効果的な介入アプローチを考えるためにTTMに注目し、本研究で示された課題や限界をふまえ検討を重ねていくことが期待される。
(著者コメント)
我が国では疾病の早期発見の観点から健診・検診受診率の向上のための調査はされているものの、行動科学の理論に基づいた研究は諸外国に比べて少ないです。誰に、いつ、どのようなメッセージを送ることが受診率向上そして維持に結びつくのかを検討するにあたり、やはり理論に基づいた研究が必要ではないかと思います。本研究ではその一つとしてTTMを用いたのですが、課題も多く出てきました。この結果を踏まえ、現在乳がん検診やがん検診受診行動の調査を行っています。まだまだ始まったばかりの研究ですが、今後の具体的な介入を考える際の一助と成ればと思っています。

(文責:長塚)

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