医療心理学・行動医学に関するネットワーク

【学会報告】日本心理学会第73回大会 8月26日~28日 京都

      8月26日~28日に立命館大学で開催された日本心理学会第73回大会において、6回目となる「サイコオンコロジー」のワークショップに、話題提供者として参加した。今回のテーマは、患者、遺族、および医療者の感情反応と精神的健康についてであり、がんというストレス状況に立ち向かう人々の感情について議論し、精神的健康とQOLについて考えていくことであった。
企画者は、北里大学・岩満優美先生、大阪大学・平井啓先生、話題提供者は東北学院大学・堀毛裕子先生、筑波大学・浅井真理子先生、そして近畿大学・塩崎麻里子であった。指定討論者は、筑波大学・松井豊先生、大阪大学・平井啓先生であった。
最初の話題提供は、塩崎による遺族の後悔と精神的健康に関する研究についてであった。この研究は、心理学で培われてきた知見を、遺族の後悔を理解するために活用しようとしたもので、遺族は行ったことに対してよりも、行わなかったことに対してより多く後悔をしており、行わなかったことに対して後悔している遺族は、後悔のない遺族に比べて精神的に不健康で、悲嘆が強いことを示したものであった。また、後悔という感情のもつポジティブな機能に言及し、遺族の後悔を研究する意義について話題提供がなされた。
次に、浅井真理子先生からは、がん医療に関わる医師のバーンアウトに関する研究について話題提供がなされた。この研究は、がん専門病院、または緩和ケア病棟に勤務する全国の常勤医を対象としたものであった。日本の特徴としては、個人的達成感の減退が著しいことであり、その関連要因として、患者の症状緩和、心理的状態の評価、患者とのコミュニケーションが明らかになり、それぞれに対する対策が提案された。また、がん専門病院では精神的ケアの満足、緩和ケア病棟では身体的ケアの満足を高める支援を優先すべきことが示された。
最後に、堀毛裕子先生からは、乳がん患者の語りと健康生成論に関する研究について話題提供がなされた。この研究は、首尾一貫感覚(sense of coherence;SOC)に着目した研究で、たとえ乳がんに罹患した場合にも、高いSOCを有している患者は、QOLが高いことを示したものであった。特に、乳がん患者のSOCに関して、量的なデータと質的なデータの両側面から検討されていることにより、乳がん患者のSOCに関する具体的な理解が深まった。SOCを有効な手がかりとして、乳がんに罹患した経験にポジティブな意味付けを持たせる、あるいは納得させる介入が有効ではないかと提案された。
指定討論では、平井啓先生からは共通の議題として、最終的に介入を提案する際に、それぞれの研究で扱った感情変数に影響する本当の媒介変数は何か?現段階で考えられる具体的な支援策は何か?という点が指摘された。また、松井豊先生からは悲嘆研究の広がりや、惨事ストレスのとらえ方の文化差についてのご紹介があった後、共通の議題として、それぞれの研究で扱った感情変数の日本人に特有の側面に関する考察が求められた。
「がん医療と医学において心理学の果たす役割は何か?」その第6弾としての本ワークショップでは、がん医療と医学において具体的な示唆を富む心理学的研究のあり方について深く考えさせられるワークショップであった。

(貴重な経験をありがとうございました・・・文責:塩崎麻里子)

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