医療心理学・行動医学に関するネットワーク

IPOS参加記2009

  研究者を志して以来、かねての目標であった国際学会発表を経験してきました。それもIPOS(国際サイコオンコロジー学会)で、しかもウィーンです。学会会場は、ドナウパークに隣接するVACで、会場の向こうにドナウタワーが見えるすばらしい場所でした。   世界のサイコオンコロジスト達が集うこの学会で、自分がこれまで進めてきた研究がどう評価されるのかが出発前の懸念でもありました。
  IPOSに限ったことではないものの、コーヒーブレイクが1日に2回(それも時間も飲み物もお菓子もたっぷり)、ランチブレイクが1回(がっちり食べてきました)設けられ、コーヒーやランチプレートを片手にポスター前でディスカッションする光景はとても優雅に感じ、国内の学会とは一味違う雰囲気を味わってきました。また、発表に使用されるポスターも人目を引くデザインで凝ったものが多く、「読んでほしい!」というアピールがひしひしと伝わってくるものばかりで、ポスター前に立つ発表者も積極的に声をかけていたのが印象的でした。
  今回の私の発表は、遺族のUnfinished Taskの経時的変化を質的縦断研究でまとめたものでした。特に、予後不良のがんであったにもかかわらず、やるべきこと、為すべき課題に着手できなかった遺族は、死別後の生活を通じ、闘病当時の相互作用のあり方を再評価していく…という点が今回の発表のアピールポイントでした。その私のポスターの前にも、多くの方々が訪れてくださり、配布資料を片手にカタコトの英語で研究説明をし、ご意見をいただいてきました。質的研究から得られた結果を理論としてまとめたものを発表したので、「早く実証研究を。その実証研究はどうやって行うのか知りたい」と複数の先生がたにアドバイスされました。かねてから自身の研究の課題と思っていたことを見事に指摘されたわけですが、そう言ってもらえたことがとても嬉しかったのです。しかし、コミュニケーション力不足から、「今、病院で生前からのアクションリサーチに着手しています」と答えるのが精一杯で、英語力の向上という新たな課題が生まれました。
日本で印刷した配布資料では足りずに、追加印刷をIPOS事務局にお願いした際に、快く、しかも無料で資料コピーをしてくれた腕にTatooを入れた女性の笑顔が忘れられません。学部時代にかじったドイツ語のおかげでコミュニケーションすることができました。
  シンポジウム、ワークショップの会場を覗いてみると、シンプルなプレゼンテーションで分かりやすく研究説明がされており、英語が苦手な私にもすんなり理解ができました。潮流としては、“いかに改善を図るための介入を行うか”に焦点が当てられている研究が多いように感じられました。CBTの効果を何で捉えようとしているのか、Self-Efficacyをどの時点で測定するのか、など興味深いセッション(Psychosocial Interventions)に参加し、「サンプリングに偏りはないか」や「介入群・非介入群の統制は適正になされているか」というフロアからの質問も参考に、自身のアクションリサーチにどう応用していくかを考えるいい機会を得ました。
  初ものづくしの国際学会で最も印象に残ったこと、それはNの数です。1研究のNの数だけではなく、触れる研究すべてのNを頭の中で足し算し、「世界にはこれだけの数のがん患者がいるのか」という驚きです。これだけの数のがん患者を医師や医療スタッフが診て、これだけの数のがん患者を看る家族がいる…。そう考えただけで、胸が絞めつけられる思いがすると同時に、私の研究の新たな野望がふつふつと湧いてきました。「世界中のがん患者と家族にHAPPYを」これが私の研究の遠い壮大な目標になりました。
  モチベーションの向上、世界のサイコオンコロジストとの交流と初めてのIPOS参加はいいことずくめでした。思い切って参加して、大変有意義な時間を過ごすことができました。
来年のIPOS開催地はカナダのケベックです。再び心を震わすような研究との出会いを今から楽しみにしています。(文責 関西大学大学院博士課程 佐藤貴之)

ipos.JPGposter.jpg

(会場では、素晴らしいデザインのポスターをたくさんみることができました。そのうちの1つです)kawaii70.JPG

コメントを残す