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終末期のがん患者を介護した遺族による介護経験の評価尺度

終末期のがん患者を介護した遺族による介護経験の評価尺度作成に関する論文が、psyco-oncologyにパブリッシュされました。緩和医療学会のニューズレターに、この論文の解説記事を投稿しました。(下記に再掲します)。ご関心のある方はご連絡ください。

Caregiving Consequence Inventory: A measure for evaluating caregiving consequence from the bereaved family member’s perspective. Makiko Sanjo, Tatsuya Morita, Mitsunori Miyashita, Mariko Shiozaki, Kazuki Sato, Kei Hirai, Yasuo Shima, Yosuke Uchitomi. psycho-oncology. 2009;18(6):657-66.

終末期がん患者を介護する家族は、身体的、心理的、経済的に多くの負担を感じ、その負担は家族や遺族の健康状態にも影響することが報告されている。ま た、近年、介護者においては、負担感ばかりでなく、介護経験を通じた肯定的な認識(以下、介護肯定感)も捉えることが重要であると指摘されている。しか し、わが国では、終末期がん患者を介護する家族の介護負担感、介護肯定感に関する実態がこれまで把握されてこなかった。そこで、まず介護経験を負担感・肯 定感の両側面から評価しうる尺度の開発を目的とした自記式質問紙調査を行った。
地域がん診療連携拠点病院2病院を利用した終末期がん患者の遺族を対象に、介護経験の評価と尺度の併存妥当性、既知グループ妥当性、弁別妥当性を検討す るための項目への回答を依頼し、再テスト信頼性の検討も行った。298名(有効回答率63%)から回答を得、妥当性、信頼性を有する介護経験尺度が開発さ れた。
介護経験尺度は、介護肯定感を測定する「統制感」「他者への感謝」「人生の意味と目的」「優先順位の再構成」の4ドメインと、介護負担感(介護した結果、 家族が情緒的、身体的健康、社会生活および経済状態に関して被った被害の程度)を評価する「負担感」の計5ドメインから構成される。「負担感」ドメインに は、身体的負担感、時間的負担感、精神的負担感、経済的負担感を示す項目が含まれる。弁別妥当性を検討した結果、家族のアウトカム指標として、うつや適応 とは別に、介護肯定感・負担感の両面を測定することの有用性も示唆された。
【コメント】
現在、緩和ケア病棟100施設、在宅緩和ケア施設14施設、がん診療連携拠点病院56施設を利用した患者の遺族を対象に、本尺度を使用した大規模な調査がすでに終了しており、今後結果を公表していく予定である。
本尺度は、介護経験の両側面を測定可能であると共に、項目数が16項目と短く、他の測定項目と組み合わせて利用しやすいという特徴を有する。
本尺度と、介護時の介護者の状況および医療者、周囲の関わりに関する項目を組み合わせることによって、どのような要因が介護負担感の軽減および介護肯定感の獲得に影響するのかを検討し、介入プログラム作成の示唆を得ることが可能になると考えている。

尺度の具体的な使用方法は、「緩和ケア 10月増刊号 臨床と研究に役立つ緩和ケアのアセスメント・ツール 青海社・家族・介護者のケア 2.終末期のがん患者を介護した遺族による介護経験の評価尺度」をご覧下さい。

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