医療心理学・行動医学に関するネットワーク

【学会報告】Society for Integrative Medicine

11月15〜17日にサンフランシスコで開催されたSociety for Integrative Oncology (SIO) という学会に参加してきました。この学会は、がんの補完代替医療をカバーする学会でさまざまな職種や分野の研究者の参加する学会です。今年で第3回目で、昨年のボストンでの大会から参加して要ります。去年もボストンで開かれた大会に参加してきました。今回の会場はサンフランシスコの最も中心(ケーブルカーの出発点)にあるホテルでした。

初日に自分の研究に関係するものがかたまっていたのですが、まず、大会の挨拶でSusan Folkmanという人が挨拶してました。どこかで聞いたことある名前だなとおもっていてひっかかっていたんですが、やはり、あの、Lazarus & FolkmanのFolkmanでした。Psycho-oncologyにも論文を書いていたのはしっていたのですが、CAM関係の学会に関係しているとはしりませんでした。現在の肩書きですが、

Susan Folkman, PhD
* Professor of Medicine, UCSF
* Osher Foundation Distinguished Professor of Integrative Medicine
* Director, Osher Center for Integrative Medicine

とのことで、ずばり、統合医療というか補完代替医療です。心理学者が補完代替医療の部門のヘッドをやっている、しかも心理学者としても著名な業績のある方がやっているというのは、勇気づけられることです。

次に、免疫とストレスというセッションで、Barbara Andersonというこれまた心理で論文をみかける人の話をききました。内容は、乳癌患者に対する心理的介入の長期フォローに関する研究を紹介し、その中で、免疫機能との関係を紹介してました。まず、包括的なモデルを提示してたのがよかったです。その中では、属性とか治療状態とストレスを媒介するものとして、「コンプライアンス」と「ヘルスビヘイビア」が2つの主な媒介変数となっていた。まことにリーズナブルなモデルでした。

もう一つ、心理とはあんまり関係ないかもしれませんが、テロメアとストレスというの発表がありました。テロメアは、ストレスがかかると短くなるみたいな話しでした。ちなみにHigh stressとshort telomeresの相関がR2=-0.19だそうです(Challenge/Threat relates to longer telomeres: r = .26, p < .05)。

もう一つその日の最後にあったセッションで、Lorenzo CohenというM.D. Anderson Cancer Centerの研究者が、術前の前立腺癌患者に対して、術前からのストレスマネージメント介入を実施し、長期的な影響(1年?)を報告してました。この発表は去年もあって、今年は長期的な結果を報告したというものでした。この介入は、ストレスマネジメント群(SM群)・サポート群(SA群)・通常のケア群(UA群)の3群にランダマイズするいわゆる”Intentional control”という心理的介入の介入研究のデザインとしては非常に質の高いものです。結果は、SM群>SA群>UC群でしたが、SM群とSA群の間には有意差はなく、同じような傾向でした。なので、「術前からclinical psychologistに会えた人には長期的な恩恵がある」ということになります。よって「ストレスマネジメントが特異的に有効」という結果ではないです。デザインが明確なだけに結果も明確です。ただ、結果として、ストレスマネジメントをやることは何もしないよりもいいので、(ほかでもいいけど)やったほうがいいというのが主張でした。この人も実は、MD.Anderson Cancer centerのCAMのセクションのボスをやっている心理学者です。鍼灸やカエルの皮膚のエキスを注射する治療法などのいわゆるCAMの臨床試験をしている研究グループを率いておられます。このSociety for integrative oncologyでも中心的なメンバーの1人である研究者です。

その他は、Evidence-basedなMusic Therapyの展望みたいなワークショップにでましたが、感じのevidenceの部分についてはあんまり話しをせずに熱くなにかをかたっておられました。

2日目は、栄養&運動関係が中心でした。栄養では、Lawrence Kushiという日系の栄養疫学者の食生活とがんの関係の話しが非常にわかりやすくて良かったです。食に関するガイドラインをつくったとかで、そのガイドラインとその根拠となっている研究結果の解説でした。

がん患者への運動療法の研究に関する紹介もありました。わりと知られているような内容で、アクティブな運動に関するevidenceの紹介でした。アメリカならできるんですが、やはり日本ではがん患者へのかなり負荷の高い運動介入は、実施可能性とアドヒーレンスの点からちょっとしんどい感じがしました。午後からは方法論に関するセッションを聞きましたが、医師のCAMに対する態度の文化差についての発表があり、日本のCAM研究班の兵頭先生の論文が引用されていました。

心理学に関係する内容は以上のような内容でしたが、全体としては、やはりこの分野でも、研究をリードしている心理学者がいるということが印象的でした。サイコオンコロジーや医療心理の業界は、海外に行けば、ばりばりがんばっている心理学者がたくさんいます。なんとか日本でもそういう状況に少しでも近づきたいなという思いを再認識しました。

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